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アジアのバス    
こころの旅

■アウンバンのプリンタルト (ミャンマー)



 それはアウンバンという小さな街のドライブインで休憩をしている時のことでした。私の乗った車は約4時間の峠越えを終え、あと1時間ほどでインレー湖というきれいな湖にたどり着くという手前でした。カローラバンタクシーでただひたすら走り続けるのがいつもの私の旅のスタイルですが<
つづら折の坂道を登り終えた安堵感から、珍しく休息をとったのでした。

 しかし、そんな安堵感もつかの間・・・そのドライブインにアルピコカラーの特急バス(タウンジー発ヤンゴン行き)が到着しました。『おっ、これは上高地仕様の低屋根車。撮らねば・・・』と席を立つとすぐに撮影を始めました。2,3枚撮ったところで今度はJR九州RED LINER(他社運行のヤンゴン行き) がやってきました。長野と九州、2台の長距離特急バスがこの小さな街のドライブイン出会ったのです。



 2台とも撮影を終えて満足げに自分の席に戻ると、店内はほぼ満席の賑わいとなっていました。・・・するとそこに大きなお盆を持った10歳くらいの女の子がやってきました。通常ならその手の子供たちは『物売り』なのですが、その子は違いました。店主に持ってきた大きなお盆を渡したのです。・・・その中にはたくさんの『プリンタルト』がのっていました。

 するとバスの乗客は先を競ってそのプリンタルトを注文し始めたのです。あちらからもこちらからも注文が入りお盆の上のプリンタルトはすぐになくなってしまいました。
 『そんなにおいしいものなのかな?』と思った私は完全に出遅れました。でも、なんとか最後に残った2個のタルトをGETすることができました。

 日本でファーストフードの使い捨て容器などにいささか抵抗感を持っている私は、そのプリンタルトに感心してしまいました。タルトというとエッグタルトを思い浮かべますが、ここではプラスチック製のプリン容器の代わりにプリンをクッキー生地に入れているのです。つまり、中身がプリンの「プリンタルト」なのです。

 これなら包装材は不要だし、ごみも出ません。プラスチック容器や銀紙といった包装材の少ないミャンマーに行くと、いつも頭に浮かぶのは『省資源』のこと。日本では当たり前のようにたくさんの包装材を使用していますが、ミャンマーではバナナの葉っぱなどを利用していることも多いのです。

 すばらしいアイディアに感動しながら食べてみると、これがまたうまい!!バニラビーンズの風味が口の中でふわっと広がって、油っこい料理ばかりの生活にあきあきしていた私にはとてもよい気分転換となったのです。

 結局女の子が持ってきたプリンタルトは1分ほどで全てなくなってしまい、女の子はカラのお盆とひと束の野菜を手に店から帰っていきました。『物々交換だったのかな?それとも、代金とは別のお礼なのかな?』などと考えているうち、バスのお客さんは休憩時間の終了とともにいなくなり、あたりにはまた静寂が戻ってきました。

 以来、いつもこのお店に立ち寄ると、『プリンタルトはありませんか?』と聞くのが習慣となりました。旅の終着地はインレー湖(写真 下)・・・10万人の人々が湖上で生活をしています。旅人もまた、写真のような水上ホテルに宿泊し、湖上生活者の気分を味わいます。私はホテルの部屋から釣りも楽しみます。


次に出会ったのがこのバス。
四国交通、タウンジー発の特急バスが首都のヤンゴンを目指す。
日本では見られないワイルドな姿を撮影できる。



インレー湖の水上リゾート ゴールデンアイランドコテージ2
写真の建物はレストラン棟、客室は全室コテージタイプ。


値段は朝食つきで一部屋100ドル程度。
気軽に宿泊できます。従業員の皆さんは若い人ばかりなのですが
皆親切で、何回行ってもまた行きたくなります。



朝焼けの中のコテージ。
この欄の写真は全て、フィルターは使っていないんです。


ミャンマーインレー湖の水上ホテルのテラスです。
ここでのんびりと夕陽を見るのが好きです。


インレー湖独特の漁法




■ゆずりあい・・・メーサイの路線バスにて(タイ)


メーサイのバスターミナル

 それはミャンマーから国境を越え、タイの北部の町メーサイからバスに乗ったときのことでした。へんなホンダトラックを見つけた私はメーサイの町外れの検問所前からそのバスに乗り込みました。バスはメーサイ発チェンライ行き、車内にはエアコンも無く、約2時間の長旅ながら25バーツ(約100円)の料金は貧乏旅行の私にはとても有難いのです。バスのサイズは日本並み・・・なのに座席は無理やり5列にしてあり、とても窮屈なバスでした。

 しかしバスはほぼ満席で、車掌は私に『ここに座れ』と空いている席を指差しました。席に着いて驚いたのは約11mの大型バスながらもキャブオーバーだったこと。ドライバーの脇には手すりつきの大きなエンジンルームがそびえていました。

 ・・・その後もバスの乗客は増えるばかり。席がなくなると車掌はエンジンルーム上の書類やカバンを片付け始め、立っている客数人に『ここに座れ』と指示しました。若者が3人そこに陣取りました。


エンジンルームにも3人が座った。 ドア横のおばさんが車掌さん

 ・・・しかしその後もバスの乗客は増え続け、通路も人でいっぱいになってきました。すると、私の隣に座っていた10歳くらいの男の子がぽんぽんと私に合図してきます。手招きをして、『もう少し窓側につめよう』と言うのです。私はびっくりしてしまいました。『えっ、こんな小さい子供も周りに気を遣って、譲りあうんだ・・・』と。

 ・・・こんどは赤ん坊を連れたお母さんが乗ってきました。するとドア近くの若者がすぐに立って席を譲りました。そう、そのバスには譲り合いの精神が溢れていたのです。というより、この国全体にそういう精神が溢れているのでしょう。


満席の車内、2人×3人掛けであることがわかる
この後、通路まで乗客で溢れた・・・

 ・・・しばらく進むと、今度は荷物をたくさん持ったおばあさんが前ドアから降りようとしています。

するとフロントドア脇のエンジンルームに座っていた迷彩服の若者がすっと立って手を添えました。『一緒に降りるのかな?』と思って見ていると、そうではなかったらしくお年寄りを降ろすと、若者はまたもとのエンジンルーム上によじ登って腰掛けました。
 
 お互いに何の言葉も発しないのに、要領よく周りの人に気を遣うこの国の人たちの連係プレーにとても感動してしまいました。それも大人だけが気を遣うのではなく、若者も子どもたちもバス車内の皆が周囲に気を配って生活している様子は『心の洗濯の旅行』をしている私に、大きな元気と勇気を与えてくれたのでした。



メーサイの町外れで見つけた懐かしいような新しいようなホンダトラック

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